外来がん治療認定薬剤師が病院から薬局に転職して感じたこと(専門医療機関連携薬局)

★外来がん治療認定&専門薬剤師★

Q&A方式で、実際に認定・専門のライセンスをもった薬剤師が病院から薬局に転職した際に感じたことなどをまとめました。病院から薬局への転職 のQ&Aを載せさせて頂いております。 今後、転職を考えられている先生方のご参考になればと思います。

Q 前職(病院)について教えて下さい。

A 兵庫県の県職員(公務員)として県立病院(9病院)に配属に配属される形で、職務にあたっていました。
Q 具体的にはどのような業務に携わっていましたか?やはり、がん治療が中心の業務だったのでしょうか?

A 1年目から血液内科や呼吸器内科、緩和ケア科などの病棟を担当させて頂きましたが、3年目からは救急外来・ICU・手術室・透析室のユニット系の担当になり、退職するまでこのポジションを継続していました。午前は外来化学療法室でミキシング、問題を有するがん患者様への薬剤管理指導業務、レジメン鑑査業務を行い……午後からはユニット系の病棟薬剤管理指導の業務に当たっていました。それ以外には医薬品採用を取り扱う薬事委員会や災害医療に関する災害・DMAT部会等の活動も行なっておりました。
Q 取得資格を教えて下さい。

A 以下の通りです。
・救急認定薬剤師
・日本DMAT隊員
・抗菌化学療法認定薬剤師
・外来がん治療専門薬剤師
・日病薬病院薬学認定薬剤師
Q 調剤薬局への転職の経緯を教えて下さい。

A 妻の第二子出産に伴い、子育ての負担を考えて、兵庫県から妻の実家のある広島県へ転居することを考えました。また、兵庫県職員としては、業務負担や夜勤、残業、休日出勤など、よく言えばやりがい、「好きで好んでやっていた」業務が多く、悪く言えば「子育て向き」ではなかったような印象がありました・・・そう言った点も転職の理由にあったかもしれません。
Q 収入面での違いは感じましたか?

A あまり個人的な価値観で意見することが難しいところですが、ざっくりとした転職前後の収入の明細を提示させて頂きます。ただ、病院であれば全ての病院ではないにしろ、15~20年以上も勤務すると40万円以上/月には上がりますし(責任の重さも伴いますが・・・)、薬局だとしても「売り上げ」によって収益が変動し、必ずしも高収入というわけではないような気がします。大事なことは、自分をよりどれだけレベルの高い「価値のある薬剤師」にしていけるかだと思います。認定・専門の取得はその一環になるかと思います。

●病院薬剤師:
転職前の給料明細(勤務歴6~7年)
・年収:約440~460万円
・月収:(額面:約30万円ほど)・(手取り:約19~23万円)
 ※各種手当込み、組合費等差し引きあり、夜勤手当等で変動あり・・・
・賞与:約40万円程度×2回/年※各種給与
※手当ては以下のとおり・・・
・基本給:23~24万円/月
・薬剤師手当:なし
・資格手当:なし 
(認定・専門はあくまでも自己研鑽であり、資格取得・学会発表による手当は全くなし)
・扶養手当:10000円/人/月
・通勤手当:車通勤だったため、約5000円(半額)程度まで・・・
・地域手当:10000円/月
(なぜか都会に住むと上がる方式でした・・・都会は物価が高いという理由・・・・)
・住居手当:25000円/月まで
・超過勤務手当(残業代):ほぼなし
(院内研修等の全員強制参加等でのみ発生、多くて3000円程度/月、時給:1750円設定)※10〜30時間以上/月で残業はあっても公務という形で残業代は発生しませんでした。
・夜勤手当:約2800円/回 16:00~翌日9:30まで(当直ではなく夜勤、約週一回ペース・・・)

●調剤薬局薬剤師:
転職後の給料明細
・年収:約600~650万円
・月収:(額面:約42~45万円ほど)・(手取り:約32~35万円)
 ※残業等で変動あり・・・
・賞与:約40~50万円程度×2回/年
※各種給与・手当ては以下のとおり・・・
・職能給:21.5万円/月
・薬剤師手当:30000円/月
・経験給:90000円/月 + 専門薬剤師手当:20000円/月 合計:110000円 
(自分の経験や取得資格に対してここまで給与面に反映されるのは驚きました・・・・)
・扶養手当:なし
・通勤手当:全額
・住居手当:36000円/月まで
・超過勤務手当(残業代):1分単位で発生、時給:約2500~3000円設定・・・
(あまり残業することもありません)
・夜勤手当:夜勤そのものがなし
※薬局では市民への薬に関する講演会、地域の薬剤師に対する講演会、夜間救急アルバイトなどもあるため、全て合計すると年収は700万円程度(額面)かと思います。
※ブログ業、投資業等も考慮すれば、800~900万円程度の年収(額面)になってくるでしょう。
Q 認定・専門薬剤師の調剤薬局への転職について良かった点、悪かった点を教えて下さい。

A 良かった点・悪かった点の両面もありますが、それぞれの側面から記載します。
●良かった点待遇や収入面、ほぼ定時で退社できるなど、前職ではできなかったような状況に驚きながらも、良かった面かと思います。また業務の内容としても、前職では患者様と直接お話しする機会は限られていたため、患者様と対話する機会が多く、かつ持続的にフォローしていける点がやりがいにつながると思います。
●悪かった点なかったらなかったで、気楽ではありますが、まず「カルテ」がありません!すぐにディスカッションできるような距離の近い医師、看護師もいません。そういった意味では、患者様の発言と処方内容からかなり憶測で医師の処方意図を考えながら、ワンパターンな調剤を行なっていくことも多いです。処方提案等の学術的な業務は唖然とするほど、少ないかもしれません。抗菌薬、栄養・輸液、注射剤、循環、鎮痛、鎮静等の知識も全く使う場がありません。それよりも患者様とのコミュニケーション能力が処方意図を読むにも重要になってくるでしょう。
Q 転職に伴い、大変だったことはありましたか?

A 病院と薬局では、例えですが…デスクワークから工事現場へ転職するくらい…全然ちがう職業です。いかににスピーディーに、正確に、在庫を読みながら投薬を行っていくか、「接客業」としていかに患者に気に入られるかが重要視されています。そのため、学術的な視点は正直持ちにくいのが、現状かと思います。
また、調剤報酬についても点数についての理解が全くなかったため、その問題も事務員さんに教えてもらいながら、理解していくのが大変だと思います。
その他、病院と比べ、常に閉鎖空間に複数人が滞在する形式での業務のため、人間関係を非常に問題視すべきかもしれません。私がお世話になった実習先の薬局もそうでしたが、すぐに人間関係が悪化しやすい環境の場合もあるので、スタッフ間でも人としての距離感には細心の注意を払わなければならないと思います。(病院より別の意味で気疲れが絶えないことも多いでしょう…)
Q 転職後、困った、戸惑ったことなどがあったら教えて下さい。

A 前項とやや重なりますが、薬局はいかに穏便、忠実に門前の医師の意向に従うかが重要になります。そのため、病院薬剤師の大きな役割である代替薬の提案や処方提案などの行為は薬局薬剤師において嫌縁されることが多いのだと感じました(医師側は積極的に意見してね!っと言った感じですが…薬局薬剤師が医師に意見するなんて…という方がかなり多いです…)。自分が医師に処方提案を積極的にしたり、地域の薬剤師向けに色々と講演したり活動する中で、最初は周りから異質な目で見られてきた環境もありましたが、最近では徐々にそれも変わり、改善傾向にある印象もありますので、このまま「背中で語るスタイル」で続けていこうかと思っております。
Q 転職活動はどのように行いましたか?

A 転職の活動のタイミングが2月だったということと、コロナ禍の影響で病院の採用は全くなく、調剤薬局もあまり募集はありませんでした。転職サイト・エージェントの方にご協力頂きながら、認定・専門薬剤師の受け入れに許容のある地場企業を選びました。(中には認定・専門なんて不要という薬剤師・企業も多いので…)業務負担過多なども懸念して全国展開レベルの企業はあえて避けて、地場で中規模で展開している企業を選びました。
▼転職サイトの使用については、下記の記事をご覧頂ければと思います▼
 
Q 認定をとったから何か診療報酬や収益に関与するのか?

A いいえ。
基本的には影響しませんが、一部診療報酬に関与する認定もあります。しかし、地域連携薬局、専門医療機関連携薬局等の薬局としての認定が設立され、今後は診療報酬に関与してくる可能性があります。また、何も認定・専門を取得できていない薬剤師・薬局は、診療報酬の観点からも淘汰されていくことが想定されるため、向上の意欲・意識を持ち続けて頂きたいと思います。
Q 認定・専門の取得における金銭面、時間の負担を考えると、無駄な努力に感じる?

A いいえ。
確かに認定・専門の取得において、学会費用、講座受講費用、受験費用、学習のための時間を考えるとマイナスな面ばかりが想像できるかもしれません。しかし、医療者である以上、知識のアップデートは責務であり、これに労力をかけられる薬剤師とそうでない薬剤師では、近い未来で大きな差が出てきます。「知識のある薬剤師」と「知識のない怠惰な薬剤師」であれば、患者や周囲のスタッフからの評価も差が出てくるでしょうし、自らの職務に対する姿勢にも大きく差が出てくるでしょう。それによって、自分の人生の「充実感」、「幸福感」にも差が出てくると考えます。
Q 認定・専門は取得しておくべきですか?

A はい。
認定・専門の取得については様々な意見があるかと思いますが、私個人の意見としては「必ず取っておくべき!!」だと感じております。ただただ昔ながらに通常の薬剤師として業務を続けることが悪いとは言いませんが、悪く言えば「ただの普通の薬剤師」で終わってしまします。転職を考える上でも、転職先で何の認定・専門も持っていない場合、ただの経験のみで他の薬剤師との差別化は図れません。この差別化とは「周囲から認められる」、「一目置かれる」という意味です。他の薬剤師との差別化が重要なのか?という意見もありますが、私は重要だと考えます。どの職場においても人は「自分の存在意義」を感じることによって「やりがい」を見出し、満たすことができます。そのため、転職先おいては、特に転職したばかりのタイミングでは、自分は圧倒的に弱い立場になり、その時点での周りから自分が認められるための「自分の存在意義」を見出すことは難しいでしょう。従い、「自分の存在意義」や「やりがい」を見出すためにも、他の薬剤師との差別化は重要であり、認定・専門の取得については、私は「必ず取っておくべき!!」だと感じております。
Q 調剤薬局でのやりがいを感じることを教えて下さい。

A 医師、看護師へアプローチできるというやりがいは極端に減りますが、患者、その家族に対して長期的なアプローチをできるというのが調剤薬局薬剤師のやりがい、魅力ではないでしょうか。病院ではどうしても患者様の目は「医師・看護師」に向いてしまいますが、薬局では「薬剤師」に向くことになります。何か問題があり、自分が介入することで、その問題を解決できた時に、「ありがとう、あなたがいてくれて良かった。」と言葉を頂けたり、自分のファンになってくれるような患者様が何人か出てくると、それが「やりがい」につながってくるのではないかと思っています。
Q また病院に戻りたいと思うことはありますか?

A 確かに自分が今まで病院薬剤師の時に培った知識や経験はそれほど薬局薬剤師としては役に立たないかもしれません。従い、時々ですが、自分はやっぱり病院の方が向いているのかな?と思うこともあります。
しかし、処方鑑査や医師・看護師がどのような考えて治療を行なっているのか、その時に薬剤師に何ができるかなど、病院での経験が生きるときもあります。薬局経験のみの薬剤師と異なり、介入を積極的に行えるスタイルがとれる点は強みだと思っています。(周りから最初は冷たい目で見られるかもしれませんが…)幸い、転職した企業は薬剤師の治療介入を進めている会社だったので、個人的には充実しています。

※私見ですが、私達、認定・専門薬剤師は最悪、現在の職場環境が悪くなったとしても、薬剤師としての需要は高く、調剤薬局・病院問わず、再転職することが容易かと思います。ですので、いつでも状況は変えられると思って気楽に過ごすように心がけています。

本ページではQ&A方式で、実際に認定・専門のライセンスをもった薬剤師が病院から薬局に転職した際に感じたことなどをまとめました。今後、転職を考えられている先生方のご参考になればと思います。

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