セフメタゾール(CMZ)の高用量投与について

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セフメタゾールについて

セフメタゾール(CMZ:Cefmetazole)は第2世代セフェム系注射薬であり、第1世代の抗菌薬スペクトラムに加えて、BLNAR以外のインフルエンザ菌、Moraxella catarrhalis や、髄膜炎菌、淋菌のようなグラム陰性球菌、一部の腸内細菌にも有効とされています。嫌気性菌(Bacteroides fragilis)などにも有効であり、下部消化管の手術におけるSSI予防での使用、その他に胆嚢炎、憩室炎などの市中軽症な消化管感染、骨盤内炎症性疾患(PID)などにも使用することができます。

また、近年増加傾向にあるESBLs産生菌にも感受性があり、第1選択としてのMEPMで抗菌薬加療を導入しているESBLs産生菌検出症例などに対して、CMZ への de-escalation の提案も日常の臨床では頻繁に行われています。

その他には断酒作用(ジスルフィラム様作用)があるため、投与中もしくは投与後のアルコール摂取には注意が必要です。

セフメタゾールの用量設定

CMZの用量はサンフォード感染症治療には記載がなく、添付文書用量などでしか、投与量の規定を確認することができません。添付文書では難治性又は重症感染症には最大投与量 4 g / 日まで投与可能と記載されています。しかし、実臨床では重篤な患者に対してはさらに高用量のCMZを投与することが頻繁に行われています。

では、実際にCMZはどこまで増量できるのでしょうか?

実際にCMZの高用量投与について言及した論文がいくつか存在します。その一つに血液感染を認めた50例以上の患者群(42%ががん化学療法施行中、好中球減少あり、ステロイドを含む免疫抑制剤使用中などの患者)の中で半数以上がCMZを4g以上投与された方向がありました。詳細には4g:21名、6g:14名、8g:15名、12g:2名と最大 12g / 日まで増量されている症例も存在しています。有効率としては75%程度、投与量を増量するほど有効性の頻度が増す結果となっています。副作用については1件のみで、皮内反応陰性にも関わらず、点滴中に全身に蕁麻疹の出現を認めた症例がありましたが、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン投与により、 1日で皮疹は消退していました。

Effect of Cefmetazole on severe infections complicated with blood diseases. kawagoe et al. Jpn Pharmacol Ther. Vol10 No.3 Mar.1982

上記のような報告から、CMZの高用量投与を行う際には最大投与量として12gまで投与を行った症例(日本)が存在することを考慮しておいても良いかもしれません。ただし、これらはあくまでも添付文書から逸脱した用量であることから、使用については主治医と協議のもと慎重に行う必要があります。保険診療上も査定される可能性があります(筆者は現時点で査定の経験なし)。

腎機能障害のある患者へのセフメタゾールの投与量

臨床上、CMZを使用する上で困るのは腎機能障害のある患者へのCMZの投与量の設定ではないでしょうか。添付文書上には以下のようなテーブルが設定されていますが、かなりの少量の記載となっています。

では、実際にはどのように設定したら良いのでしょうか。感染症プラチナマニュアルには以下のように設定が記載されています。1日量は 4 g までとなっていますね。

腎機能別薬剤投与量POCKET BOOK 日本腎臓病薬物療法学会 には以下のように設定されています。感染症プラチナマニュアルとはやや異なりますが、1日量はやはり 4 g までとなっていますね。

また、いくつかの文献を参照した上で、医師の中には以下のサンフォード感染症治療ガイドにおけるセファゾリン(CEZ:Cefazolin)の用量に合わせて、CMZの用量を設定しているような施設もあるようです。特にCHDF(CRRT)を施行している場合にはCMZの透析除去率を検討した報告などがなく、CHDF(CRRT)用量の設定を記述したものがないため、この設定が利用されることも多いようです。

最後に

どの用量設定を用いるのかは、各施設、各医師・薬剤師により、異なってきますが、CMZ自体の副作用のリスクは低い薬剤であり、生命に関わる重症感染症を治療中なのであれば、より高用量の設定が必要になると考えます。

ただし、これらもあくまでも添付文書から逸脱した用量であることから、使用については主治医と協議のもと慎重に行う必要があります。保険診療上も査定される可能性があります(筆者は現時点で査定の経験なし)。

参考:
・Effect of Cefmetazole on severe infections complicated with blood diseases. kawagoe et al. Jpn Pharmacol Ther. Vol10 No.3 Mar.1982
・原 耕平:内科領域におけるCefmetazoleの臨床的検討、感染症学雑誌53(2):75~81 1979
・真下啓明:Cefmetazole(CS-1170)について 感染症学雑誌53(2):48~51 1979
・change H.Y. et al.couses of death in adults with acute leukemia. medicine55(3)259~268 1979
・mackie P.H. et al.J.chem.pathol. 32:1253~1256 1979
・Bodey G.P. et al. international symposium of thicarcillin, pp.151~157 1977




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