腎機能はどのように評価する?
腎機能はどのように評価したいいのか?検査値、バイタル、心機能、尿量?
ユニット病床ならともかく、尿量測定も一般病床ではほとんど行われていないし・・・
血清Cr値を用いても・・・
●腎機能が良くてCrが低いのか?
●筋力低下があってCrが低いのか?栄養状態が悪くてCrが低いのか?
●eGFRが検査値で測定されているけれど、これをそのまま信用してもいいんだろうか?
eGFRを使う? CCRを使う?①
eGFRとクレアチニンクリアランス(CCR)はなにが違うのでしょうか??
●血清Cr値によるeGFR(ml/min/1.73m2)
式:eGFR (ml/min/1.73㎡) = 194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739 (女性)
※日本人向けGFR換算式(18歳以上の成人が対象であり、小児には適用できない)
「体表面積がもしも1.73m2であったなら」という仮の値。
1.73m2は身長170cm、体重63kgに相当するが、高齢女性ではこんな身長・体重の方はほとんどいない。したがって、平均的な体格の男性患者以外ではeGFR補正値(mL/min/1.73m2)を用いて投与設計することは、本来相応しくない。特に痩せた高齢者では過大評価しやすいのが欠点。
論より証拠です。実際に計算ソフトで代入してみましょう。90歳、女性、40kg、血清Cr:0.6mg/dL、いかにもよくいるやせ形の高齢患者ではないでしょうか。
結果をみていかがでしょうか?! eGFR(ml/min/1.73m2)では68.9(ml/min/1.73m2)も腎機能があるのに、CCRでは39.4(mL/min)となっており、eGFRとCCRで乖離が生じています。eGFR(ml/min/1.73m2)は体重を計算式に含めておらず、仮想の値であることから、腎機能を過大評価している可能性があります。従って、このようにやせ形の多い高齢者ではCCRを使用することの方が正しいと考えられます。
参考①: CKDの重症度分類に体表面積補正値を用いる理由は?
小柄な体格の患者は体格なりの小さなGFRで十分なのに、体表面積未補正値を用いると腎機能を過小評価してCKD患者になってしまうことを防ぐため。
参考②: かつては日本人の体表面積は1.49m2が用いられていた?
国際的には1.73m2が用いられる。一般的な日本の入院患者を想定すると1.49m2の方が妥当かもしれない。
eGFRを使う? CCRを使う?②
●Cockcroft-Gault式による推算CCR(ml/min)
式:CCR(ml/min)=(140-年齢)×体重(kg)×0.85(女性の場合) / 72×血清Cr値(mg/dl)
※ Cockcroft-Gault式
血清Cr値が0.6未満の患者では過大評価しやすいが、体重を換算式に組み込んでおり、一般的にeGFR(ml/min/1.73m2)より正確といえる。しかし、身長を考慮されていないため、肥満患者では過大評価するため理想体重※を用いる必要がある。
●血清Cr値が0.6mg/dL未満の高齢フレイル症例の腎機能推算式の血清Cr値として0.6mg/dLを代入すると予測性が高くなることが多い。ただし自分の目で症例の体格を確認すること。まれに痩せているがフレイルではなく活動的な症例の場合、腎機能がよい可能性がある。特にVCMなどの重要な腎排泄薬物などの投与時に有用。(ラウンドアップ)
● 60歳以下の腎機能正常者で全身炎症(SIRS)によりICU管理下で血管作動薬・輸液の投与を受けている患者ではeGFRが150~160mL/min/1.73m2に上昇することがある。これは過大腎クリアランス(ARC)により腎機能が高くなっており、血清Cr値は0.6未満になることもある。特に抗菌薬の大量投与を行わないと十分な効果が得られないのはこのような状態。
+α
①血清Cr値には10%程度の日内変動があり、0.1mg/dlの差が推算値ではCCRやGFRで10ml/min前後の差になることがある(特に血清Crが低いときに推算値の差が大きくなる)。
②血清Cr値は、長時間の起立、激しい運動時や肉(タンパク質)の大量摂取には上昇し、タンパク摂取制限時には低下する。
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